コラム
【連載/金融教育】第2回:「貯蓄から投資へ」と言われ立ち止まってしまう人たちは、なにをすればいいか?
本連載の第1回では「難しすぎて根付かなかった金融教育」を止め、「ふつうの人が知っておくべき最低限のこと」に情報をしぼってお伝えしていくことをお話しました。
「金融教育」に入る前に、知っておくべき基本的な知識とは
1. 貯蓄から投資へ
そもそも、金融教育の本質的な狙いは「貯蓄から投資へ」の動きを加速させることです。このフレーズ自体は、高度成長期からバブル期にかけて日本人の資産が預貯金に偏ってしまい、銀行が大きなリスクを取った結果、バブル崩壊とともに金融システムが大きなダメージを受けたことの反省に基づいて、銀行だけにリスクを取らせるのではなく、国民ひとりひとりがリスクを引き受けていくことの重要性を説いたもので、預貯金を「投資」に振り向けていくことがここ30年間の金融行政の重要な目的でした。
ただ、残念なことに今でもそれは実現しておらず、2022年に岸田政権の「所得倍増プラン」において、改めてその重要性が再確認されたというのが現状です。
ここで、「貯蓄から投資へ」といったときの「貯蓄」は銀行などへの預貯金と考えてもよいとして、「投資」とはいったいなんなのでしょうか?パッと思いつくものを並べてみても、株式や債券、不動産、ファンドなどがあります。高級腕時計やトレーディングカードも投資対象として扱われることがありますし、かつてはゴルフ場会員権なども投資対象でした。「投資か?投機か?」という神学論争を呼び起こしますが、FXや仮想通貨も投資の一種であることは間違いないでしょう。
いずれにせよ、それまで金融知識のなかった人に「貯蓄から投資へ」というスローガンを投げかけたとしても、「投資しろといわれても具体的になにをすればいいのか?」という壁にぶつかってしまい、多くの人はそこで立ち止まってしまうのではないでしょうか?
では結局、投資初心者がやっておくといいことは?
結論からいってしまうと、金融について詳しくない人が投資するべきものは「インデックス型投資信託」のみです。これだけ知っておけば十分で、一生困ることはありません。金融教育でついつい「教育」されがちな株式や債券、不動産などの知識は全く必要ありません。とはいえ、金融について詳しくない人にとっては「インデックス型投資信託」という言葉自体を初めて聞いたという人も多いでしょう。そもそもどうやって買えばいいのかもわからないという人が大半なのではないでしょうか。
実は、これにもすでに明快な回答があります。それは「つみたてNISAをやればよい」ということです。よくニュースになっているので聞いたことくらいはあるのではないかと思いますが、つみたてNISAは、主要な投資対象がインデックス型投資信託であり(例外あり)、投資による収益が非課税となるので、投資初心者にはうってつけの制度です。新しいつみたてNISAでは、非課税の積立限度額が1,800万円になるので、仕事をリタイヤするまでの間に限度まで積み立てられれば、QOLの充実した老後を過ごすことができるのではないでしょうか。
なお、つみたてNISAにも「アクティブ型投資信託」や「成長投資枠」などの例外的なものがありますが、投資初心者の方はこれらを気にする必要はありません。これらは、しっかり勉強して投資の知識や経験が充実した人が利用すべきものです。投資にたいした興味がなく、勉強するつもりもないという、おそらくは大多数の「ふつうの人」は、これらを全く無視してしまって構いません。これまで、資産の大部分を預貯金で保有してきたような人は、その預貯金の一部を「インデックス型投資信託」に振り替えることこそが「貯蓄から投資へ」であると理解してよいです。