コラム

2023-04-27 17:05:00

年齢と所得水準で違う、「高額療養費制度」活用での負担額

がんと診断されて、どのくらいの治療費が必要になるのか不安になっている方も多いのではないでしょうか?実際、全国のがん相談支援センターでも、経済的なお悩みの相談は多く寄せられているようです。がんの治療は長期間にわたることも想定され、実際にどのくらいの費用がかかるかは人によっても当然異なってきます。

まずは、「高額療養費制度」を知っておくことが重要です。


制度を活用すると月の医療費負担は上限つきに。年齢と所得で変化


これは、1ケ月の医療費の負担が高額になった場合、負担額に上限を定める制度です。年齢や所得水準によってその上限は変わってきます。また、過去1年間に3回上限の支払を行った場合は、4回目はさらに上限が下がる「多数該当」という仕組みもあります。

69歳以下の方の上限額

年収 ひと月の上限額(世帯単位) 多数該当
約1,160万円~ 252,600円+(医療費-842,000)×1% 140,100円
約770万円~約1160万円 167,400円+(医療費-558,000)×1% 93,000円
約370万円~約770万円 80,100円+(医療費-267,000)×1% 44,400円
~約370万円 57,600円 44,400円
住民税非課税者 35,400円 24,600円

70歳以上の方の上限額

年収 ひと月の上限額(世帯単位) 多数該当
約1,160万円~ 252,600円+(医療費-842,000)×1% 140,100円
約770万円~約1160万円 167,400円+(医療費-558,000)×1% 93,000円
約370万円~約770万円 80,100円+(医療費-267,000)×1% 44,400円
~約370万円 57,600円外来のみの場合18,000円
(年間の上限額144,000円)
44,400円
住民税非課税者 24,600円外来のみの場合8,000円 なし
住民税非課税者(年金収入80万円以下など) 15,000円外来のみの場合8,000円 なし

※「医療費」は窓口負担額ではなく全額になります。例えば、3割負担の方で窓口で30万円支払った方は、医療費は100万円になります。(参考:https://www.mhlw.go.jp/content/000333279.pdf)

ただし、ここでの負担額に食事代や差額ベッド代などは含まれないことに注意が必要です。

がん患者の方ですと、「多数該当」となる場合も考えられますが、その場合、例えば69歳以下の年収770万円までの方ですと、どれだけ医療費がかかっても毎月の負担は44,400円に抑えられることになります。

1点気を付けておく必要があることとして、高額療養費制度は、申請してからお金が払い込まれるまでに3か月ほどかかってしまいます。いくらあとから補填されるとはいえ、やはり急な持ち出しは大変な方も多いと思います。
 そうしたトラブルに陥らないよう、入院などでまとまった支出があることが事前にわかっている場合は「限度額適用認定証」を取得しておくことをお勧めします。
 この認定証を窓口で提示すれば、支払額は高額療養費制度の上限額となるため、一時的にも高額の医療費を負担する必要はなくなります。認定証の発行には1週間程度かかる場合が多いようですが、発行手続きの詳細についてはご加入の健康保険組合、協会けんぽ、または市町村(国民健康保険・後期高齢者医療制度)など(保険証の記載をご確認ください)にお問い合わせください。


治療費はなんとかなったとしても、生活費は?個人の事情で大きく変わる経済的不安


このように、がんと診断されたからといって、突然生活ができなくなってしまうほどの多額の治療費がかかるというわけではありません。現在はがんの治療とお仕事を両立されておられる方も多数おられますし、治療費を継続的に負担しながら生活を送ることも十分可能でしょう。

とはいえ、少なからず毎月の支出が増えることは事実でしょうし、自営業やフリーランスの方などはお仕事をセーブしなければならなくなり収入が減ったりすることも考えられます。企業にお勤めの方にもさまざまな影響があることと思います。

また、保険適用にならない治療を行う場合は、上記の高額療養費制度やそもそもの公的医療保険は利用できず、医療費の全額が自己負担となってしまいます。日本では有効性が認められた治療は比較的速やかに保険適用となる傾向にありますが、がんの進行を考えるとその時間を待つこともできないという方もおられるでしょう。

さらに、がんの治療とは全く別の理由でまとまった資金が必要になることも考えられます。

そのような経済的なお悩みへの対応のひとつとして、生命保険の解約を検討される方もおられると思います。その際には、解約以外にも生命保険の売却という選択肢もあることをぜひ知っていてほしいと思います。

解約と売却を比較し、大きな金額が得られる方を選択することで、少しでも経済的な不安を取り除くことに貢献できれば幸いです。