コラム
「知っておきたい!ホントのトコロ」保険買い取りサービスは、生活保護受給にさしつかえるのか?問題
今年の春は久しぶりに新生活シーズンも自由に外出ができる状態でスタートしました。とはいえ、コロナ禍以前と同じように、というのではなく、やはりニュー・ノーマルとして変化しながらの日常が営まれている印象です。少しずつ皆さまの日常もリズムが整い始めているのではないでしょうか。
「がん治療で生活が苦しくなって、生活保護の受給を考えている。生命保険はどうしたらいい?」という問題
さて、ときどき「保険買い取りサービスを利用した場合に生活保護の受給に影響はないのか?」というご質問をいただきます。がんに罹患されたことで生活が苦しくなり、生活保護の受給を検討される方が一定おられるため、このような心配をされるのかと思います。生活保護受給時には、「現有資産を有効活用すること」が求められていますので、生命保険も解約を求められることが多いと思われます。
本来のルールを理解して、自分の資産を有効に活用すべき
生命保険を解約すると保険料の負担が解消されるとともに、一定額の解約返戻金が支払われることが多いため、生活保護を受給する前にまずはそちらを活用すべきとの考えで、それ自体は当然のものと考えています。では、本来のルールはどうなっているのでしょうか?生活保護運用事例集2017(令和3年6月改訂版)では、以下のような記載があります。
解約返戻金が少額であり、かつ保険料額が当該地域の一般世帯との均衡を失しない場合には保護開始にあたっても、直ちに解約して活用することを要しない取り扱いが認められている。
これによれば、生命保険はそもそも解約しなくてもよいケースがありうるということが明確です。
また、解約返戻金額の具体的な要件についても以下のようにあります。
解約返戻金の額が少額かどうかの判断は、当面、都内実施機関においては、30万円または最低生活費(介護扶助、医療扶助を除く。)の概ね3ヶ月分を超えているかどうかを目安にして、判断する。
なお、解約返戻金を担保に貸付を受けているときには、実際の受けられる解約返戻金の額で判断する。
これらを総合して判断すれば、生命保険の買い取りサービスを利用した場合は、
● 保険料の負担がなくなること
● 解約返戻金を受け取る権利がなくなり、「実際の受けられる解約返戻金の額」はゼロと考えられる
ことから、生活保護の受給に関しては障害にならないという解釈が自然であると言えます。
行政側の「財源の有効活用」の観点でも、保険買い取りサービスは期待ができる!
ただ、以前実際に生活保護の担当者と話した際、実際は保険に加入していると生活保護を認めづらくなるため、原則としては解約してもらっているというようなお話を伺ったことがあります。
行政としては、限りある財源の有効活用のために当然の対応なのかもしれませんが、保険買い取りサービスという新しい選択肢が生じたからには、ぜひ本来の取り扱いに立ち戻って柔軟な取扱いをしていただければと考えています。
たとえば、定期保険であれば解約返戻金は数十万円からゼロのものが大半でしょうが、仮に保険買い取りサービスを利用すれば、条件によっては数百万円で買い取ることも可能であり、その資金がなくなるまでは生活保護開始を遅らせることも可能で、財源の有効活用という目的からは、保険買取サービスの利用はむしろ推奨されるべきものであると考えています。
また、米国のメディケイド(低所得者向けの公的医療保険)でも、日本の生活保護同様に保険の解約を求められるとのことですが、そこでは保険の買い取りサービスが積極的に利用され、可能な限り自らの資産を有効活用することが求められるそうです。
ぜひ日本でも、生活保護申請前に保険買い取りサービスを利用するという慣習が広まってほしいものです。もしこのコラムで取り上げてほしい話題がありましたらお気軽にご連絡ください。