コラム

2024-11-11 16:06:00

生命保険は売却できる?売る方法を解説

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がんに罹患して、今後の治療費や生活費に不安を感じている、加入している生命保険の保険料を支払っていけるか不安という方は、生命保険買取サービスの活用を検討してみましょう。生命保険買取サービスとは、現在加入している生命保険を買い取ってもらい、買取代金が受け取れるサービスのことです。この記事では生命保険買取サービスのメリット・デメリット、生命保険を売却する流れを解説します。

生命保険の買取サービスとは?

生命保険の買取サービスとは、加入している生命保険を、生命保険買取サービス会社(以下、買取会社)に買い取ってもらうサービスのことです。

申込者は買取会社から、保険の買取代金を受け取ります。買い取られた後の保険料の負担は買取会社が行い、保険が継続します。また保険を買い取った後に、被保険者に万が一のことがあった場合、保険金を買取会社が受け取る仕組みです。

一旦、買取会社から受け取った買取金額は、いかなる理由があっても返済義務はありません。ただし事前に申告した内容に虚偽があるなど、買取契約に定められた事項に違反する場合には、買取金額の返還を求められる場合があります。

買取会社に保険を買い取ってもらうことで、解約返戻金よりも高く買い取ってもらえる可能性があります。解約返戻金とは、保険を解約したときに戻ってくるお金のことです。

また保険契約の買取全体を通じて、利用者が負担するのは、医療機関から診断書を取得する費用などの事務的な経費程度になります。

どういった人が生命保険買取サービスを使うの?

生命保険の買取サービスは、もともとAIDS患者の生活費や医療費の不足の悩みを解消するために、1980年代にアメリカで生まれたサービスです。

その後アメリカでは、高齢者が老後生活を補うための財産処分方法としてや、事業売却や役員の退任で死亡保障が不要になった経営者保険など、買取範囲が広がっています。

一方、日本の生命保険買取サービスは、主に以下のようなケースでまとまったお金を受け取りたいときに活用できます。ただし買取会社によっては、対応していないケースもあります。

  • 保険料負担が重く、保険をこれ以上継続することが困難
  • 家族に資産を遺す必要がなく、残りの人生を充実させたい
  • 介護資金・介護施設入居資金が必要になった
  • 高度な治療を受けるために、高額な治療費が必要になった
  • まとまった資金が必要になった
  • 法人で、役員保険が不要になった、または保険料の支払いを停止したい
アメリカの保険買取の市場規模

生命保険買取が誕生したアメリカにおける市場規模は1,000億円前後で、買取金額ベースでは概ね拡大傾向です。

アメリカのライフセトルメント業界団体であるLISA(ライフ・インシュアランス・セトルメント協会)は、2023年の市場データ収集調査で、アメリカのシニアが生命保険を売却することにより、解約返戻金(CSV)の6倍となる総額8億4200万ドル(約1250億円)を得たと発表しました。生命保険を売却する「ライフセトルメント」の取引件数は前年よりわずかに増加しており、この売却方法がシニア層に大きな経済的利益をもたらしていることが明らかになりました。

アメリカでは生命保険の買い取りを公的に推奨していることもありますが、世界第三位の保険大国である日本においても、数百億円規模の市場が期待できます。

生命保険を売却するメリット・デメリット

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生命保険買取サービスを利用すると、解約返戻金以上の現金が受け取れる可能性がある、保険料の支払いが不要になるなどのメリットがあります。しかし受け取れる保険金額が減ってしまう、家族への保障がなくなってしまう、健康な方にとって不利になるといったデメリットもあります。

以下、生命保険買取サービスのメリット・デメリットについて詳しく紹介します。

メリット1:現金を得られる

生命保険を買い取ってもらうことで、まとまった現金を得られます。

例えばがんの治療費が必要なうえ、治療で仕事ができず収入が減ってしまうと、加入している生命保険の保険料の支払いが難しくなります。この場合の対策として、保険の解約が挙げられますが、解約しても戻ってくるお金が少ないケースもあるでしょう。

もう1つの対策として、解約返戻金の一定範囲内まで借り入れができる契約者貸付がありますが、利息がかかるうえ、保険料の支払いは続きます。返済ができず元利(元本+利息)が解約返戻金を超えると、契約が失効または解除されてしまいます。

・金子先生より

契約者貸付で借りられる金額の上限は、どの保険会社も解約返戻金のおおよそ7~9割以内です。また契約者貸付を利用すると、保険会社が定めた利息と併せて返済しなければなりません。残債が残った状態で万が一のことがあると、保険金額から差し引かれてしまうため注意が必要です。

しかし生命保険の売却によりまとまった現金が得られれば、がんの治療費や当面の生活費に充てることができるでしょう。

しかし生命保険の売却によりまとまった現金が得られれば、がんの治療費や当面の生活費に充てることができるでしょう。

メリット2:解約返戻金よりも高い金額を受け取ることが可能

生命保険買取サービスを利用すれば、解約返戻金よりも高い金額を受け取れる場合があります。

加入している生命保険を解約しても、戻ってくるお金が少ない、あるいは定期保険のように解約返戻金がない商品に加入しているケースもあるでしょう。

また解約返戻金の金額は健康な方を前提に定められており、重病にかかったからといって金額が増えるわけではありません。

生命保険買取サービスを利用して、解約返戻金よりも高い金額で生命保険を買い取ってもらえれば、一時的に家計が厳しい時期の負担を軽減できる可能性があります。

メリット3:保険料を支払う必要がなくなる

買取会社が買取金額を支払った後は、保険会社への保険料支払いを買取会社が引き継ぎます。

そのため保険買取の手続き完了後は、申込者が保険料を支払う必要がありません。

保険買取サービスは、保険料の支払いが負担に感じている方や、病気で働けず治療費や生活費を支払っていくことが難しいケースなどに役立ちます。まとまった買取金額を受け取った後は、保険料の負担や引き落とし日を心配せず、治療に専念できる点もメリットと言えるでしょう。

デメリット1:受け取れる金額は保険金額より低い

生命保険の買取金額は、解約返戻金を上回る可能性がありますが、死亡保険金額より少なくなります。

買取の一例を紹介すると、死亡保険金額2,100万円、解約返戻金250万円の生命保険の買取額は840万円です。この場合、解約返戻金より590万円多く受け取れますが、死亡保険金に対しては1,260万円不足しています。

また保険を解約せず、最後まで保険を継続したほうが金銭的に有利なケースが多いため、本当に保険を売却するメリットがあるか十分検討が必要です。

リビングニーズ特約や、重度がん保険金前払い特約により保険金が受け取れる可能性がないかどうかも確認しましょう。

リビングニーズ特約とは、被保険者が医師に余命6ヵ月以内と告げられたら、主契約の死亡保険金の全部、あるいは一部が請求できる特約です。重度がん保険金前払い特約とは、所定のがんと診断確定され、標準的な治療では効果がないと判断されたときに、死亡保険金の全部または一部が請求できる特約です。

デメリット2:家族にお金を残せない

生命保険を売却すると、死亡保険金を買取会社が受け取ることになります。

本来、死亡保険金は、被保険者に万が一のことが起きたときに、遺された家族の生活費を保障する目的で加入します。しかし保険を売却してしまうと、万が一のことが起きても死亡保険金は家族に支払われず、死亡保険に加入した当初の目的が果たせなくなるため、注意が必要です。

なお一定の要件を満たし、買取会社が同意した場合は、その時点での解約返戻金額で保険契約を買い戻すことができます。

・金子先生より

国民年金や厚生年金に加入していた方が亡くなった場合、「遺族年金」という年金が遺族に支払われる場合があります。受け取れる遺族年金の金額は、働き方や子どもの数などによって異なります。生命保険の買取サービスを利用するときは、遺族年金の金額も踏まえて検討すると良いでしょう。

デメリット3:健康状態が良い場合には不利

生命保険買取サービスは、被保険者の健康状態が良いほど、買取金額が安くなる傾向があります。つまり健康状態が良い方は、同サービスを利用する場合、不利になるということです。

同サービスは申込者から保険を買い取った後、買取会社が保険料を負担し、被保険者が死亡すると死亡保険金を受け取る仕組みです。そのため健康状態が良い人は、保険金を受け取るまでに買取会社が多くの保険料を負担する可能性が高いため、買取金額が低く査定されます。

生命保険を売却する方法を解説

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生命保険の買取は、どのような流れで進められるのでしょうか?マネックスの保険買取サービスを例に手続きの流れを5つのステップに分けて解説します。

①問い合わせ・相談から初期診断

まずは自身が加入している生命保険が買取可能か、買取会社に相談をしましょう。Webや電話から、簡単に相談と簡易査定の問い合わせが可能です。

また以下の必要な手続きと情報がそろっていれば1営業日以内で買取可能かどうかの初期検討が完了します。

必要な手続き

要配慮個人情報提供の同意

必要な情報

  • 年齢
  • 性別
  • がんの種類
  • がんのステージ(進行度)
  • がんの種類・ステージが診断された(おおよその)年月
  • 保険金額
  • 保険料の額(保険料免除の対象である場合はその旨)
②診断書の提出

買取会社で保険契約を買い取れる可能性があると判断した場合、申込者はかかりつけ医の診断書を取り付けて、買取会社に提出する必要があります。

病院によって異なりますが、診断書を取り付ける際は5,000~10,000円程度の自己負担が必要です。また診断書の取得は数日から、長いときは1週間以上かかることがあります。

③買取の可否・金額の結果を待つ

診断書の内容や提出された書類の内容をもとに、買取会社が保険契約の買い取りの可否、および買取金額を判断します。

通常、1週間以内に回答がありますが、医師の確認などがあると、さらに時間がかかる場合があります。なお、仮に保険契約の買い取りができなくなった場合でも、診断書作成費用を買取会社に負担してもらうことはできません。

④買取内容の合意

買取会社で保険契約の買い取りが可能となった場合でも、すぐに買い取ってくれるわけではありません。買取会社は、必要であれば面談を行い、家族や保険金受取人といった関係者の合意を取り付けます。関係者の合意を得た後、契約締結や重要事項説明等必要な手続きを行います。

通常であれば手続きは1週間程度で完了しますが、対面で実施する場合は、もう少し時間がかかる可能性があります。

⑤買取代金の振込

保険買取の契約締結を行った後、保険会社に保険金受取人変更の通知を行います。契約締結から買取代金の振り込みまで、概ね1週間かかります。

保険買取の契約が成立し、買取代金が振り込まれた後も、定期的に被保険者の状況について買取会社への連絡が必要です。またその他の所得金額にもよりますが、買取金額によっては一時所得として課税され、確定申告が必要になる場合があります。

実際に買取額はどれくらいになるの?

自身が加入している生命保険は、どれくらいで買い取ってもらえるのでしょうか?ここではマネックスの保険買取サービスの例を紹介します。

マネックスの生命保険買取の目安

マネックスの生命保険買取は、がん患者のみの保険買取を行っています。そのため買取額は、がんの種類や現在のステージ、年齢や性別、保険金や保険料などによって異なります。

参考までに60歳男性(乳がんは女性)、がん診断日に試算、保険金額1,000万円、保険料0円(保険料免除特約※あり)で、それぞれのがんのステージ4と診断されたときの買取額の目安を紹介します。

※特定の病気で保険会社所定の状態になった場合保険料が免除される特約のこと

がんの種類 買取金額の目安
肺がん 850万円
胃がん 800万円
大腸がん 600万円
肝がん 800万円
膵臓がん 900万円
乳がん 400万円

なお、ここで紹介した買取額はあくまでも目安のため、ステージごとの試算や詳細の試算を知りたい方は、「保険買取のお問い合わせ」ボタンより所定のフォームに移動し、必要事項を入力のうえお問い合わせください。

また契約日から2年以上経過していない契約や、関係者から同意が得られないときは、買い取りができません。

生命保険の売却に興味があればまず気軽にお問い合せを!

加入している生命保険を買い取ってもらうことで、解約返戻金以上の金額を受け取れる場合があります。万が一の保障はなくなってしまいますが、受け取ったお金を返済する必要はありません。がんに罹患して、お金の不安があるときは、マネックスの生命保険買取サービスまで気軽にお問い合わせください。

▼この記事の監修者

kaneko
金子賢司(かねこ けんじ)
東証一部上場企業勤務、ファイナンシャルプランナー

金融に興味を持ち、資産運用やローンなどの勉強を始める。以降ファイナンシャルプランナーとして活動し、個人・法人のお金に関する相談、北海道のテレビ番組のコメンテーター、年間毎年約100件のセミナー講師を務める。趣味はフィットネス。健康とお金、豊かなライフスタイルを実践・発信しています。

<保有資格>CFP、損保プランナー、生命保険協会認定FP